人類と痛み
2011年 04月 14日
みなさんこんばんは。きらら歯科の比嘉です。
今日は人類が痛みをどう克服していったかのお話をします。
1844年12月11日にアメリカの歯科医師ウェルズは自分の
親知らずの抜歯を行う際に笑気ガス麻酔を行い無痛的抜歯に成功しました。
この時に笑気ガスを吸入させたのがコルトン、抜歯術を担当したの
がリグズという歯科医師でした。
どうして笑気(N2O、亜酸化窒素)が麻酔に使えると彼らは思いついたのか?
この抜歯術が行われる前日に話はさかのぼります。
コルトンは興行を行うため地方巡業をしていました。
そしてハートフォードという町で見世物として観客の一人に笑気ガスを吸入させその効果により観客の緊張感が取れ、うっとりとした気分になり、そして絶えず笑みを浮かべる状態を楽しませ見世物としていたのです。
ところがアクシデントが起こります。笑気ガスを吸入していた観客が急に興奮状態となり暴れ始め自分のすねを椅子にひどくぶつけ血が流れてもまったく気付かずにあいかわらず笑いながら舞台上を飛び跳ね続けたのです。
その様子を見ていたウェルズは「この観客は痛みを感じていないのではないか?」と考え、「このガスを使えば無痛的に歯科治療ができるのでは?」と無痛的抜歯術の実験を行う決意をしました。そうして翌日ウェルズ自身の親知らずの無痛的抜歯術に成功したのです。
その後ウェルズとリグズはこの笑気ガス麻酔を用い15例の無痛的抜歯を成功させます。
そして1845年1月、ハーバード大学において医師、医学生を前にして笑気ガス麻酔の公開実験を行いました。抜歯に限らずさまざまな外科的手術の際にも麻酔というものがない時代です。
医学の世界に革命的な方法が発見されるのか?それともうそっぱちな方法ととらえられるのか?非常に大事な実験だったと思われます。
結果は大失敗に終わりました。理由は色々考えられているようですが、とにかく医学の世界ではまがいものと見なされて笑気ガス麻酔が普及することはありませんでした。
ウェルズ自身のその後の人生もあまり良いものではなかったとのことです。
さて、再び笑気ガス麻酔が歴史の舞台に登場するのは1862年、最初の抜歯術から17年の月日が流れます。その主人公は最初の手術にも立ち会ったコルトンなのでした。
コルトンは1862年に老婦人の無痛的抜歯術に成功し、1863年にはニューヨークで歯科医院を開業、笑気麻酔を用いた無痛的抜歯を一般化し、それ以来笑気ガスは歯科において抜歯に用いられるようになりました。
その後も麻酔の技術は現在へと続く進化を遂げていくのですがそこでもやはり歯科医師が重要な役割を果たします。
その話はまたつぎに書こうと思いますが、歴史的に見ても口の中の痛みというのは人類が優先的に克服する必要があったものなのかも、と考えてしまいます。それぐらい敏感なところであり、虫歯等人類と感染症との闘いの最前線の場所でもありますからね。痛くなる頻度も自然と高くなる場所です。
ですから我々歯科医師は麻酔の技術を鍛錬するとともに患者さんに不安を感じさせない工夫が必要となるのです。しかし、医の本質を考えてみるとその工夫を考えること実行し続けることは当然でもあるし、歯科医冥利に尽きることでもあると思います。
きらら歯科 比嘉。
今日は人類が痛みをどう克服していったかのお話をします。
1844年12月11日にアメリカの歯科医師ウェルズは自分の
親知らずの抜歯を行う際に笑気ガス麻酔を行い無痛的抜歯に成功しました。
この時に笑気ガスを吸入させたのがコルトン、抜歯術を担当したの
がリグズという歯科医師でした。
どうして笑気(N2O、亜酸化窒素)が麻酔に使えると彼らは思いついたのか?
この抜歯術が行われる前日に話はさかのぼります。
コルトンは興行を行うため地方巡業をしていました。
そしてハートフォードという町で見世物として観客の一人に笑気ガスを吸入させその効果により観客の緊張感が取れ、うっとりとした気分になり、そして絶えず笑みを浮かべる状態を楽しませ見世物としていたのです。
ところがアクシデントが起こります。笑気ガスを吸入していた観客が急に興奮状態となり暴れ始め自分のすねを椅子にひどくぶつけ血が流れてもまったく気付かずにあいかわらず笑いながら舞台上を飛び跳ね続けたのです。
その様子を見ていたウェルズは「この観客は痛みを感じていないのではないか?」と考え、「このガスを使えば無痛的に歯科治療ができるのでは?」と無痛的抜歯術の実験を行う決意をしました。そうして翌日ウェルズ自身の親知らずの無痛的抜歯術に成功したのです。
その後ウェルズとリグズはこの笑気ガス麻酔を用い15例の無痛的抜歯を成功させます。
そして1845年1月、ハーバード大学において医師、医学生を前にして笑気ガス麻酔の公開実験を行いました。抜歯に限らずさまざまな外科的手術の際にも麻酔というものがない時代です。
医学の世界に革命的な方法が発見されるのか?それともうそっぱちな方法ととらえられるのか?非常に大事な実験だったと思われます。
結果は大失敗に終わりました。理由は色々考えられているようですが、とにかく医学の世界ではまがいものと見なされて笑気ガス麻酔が普及することはありませんでした。
ウェルズ自身のその後の人生もあまり良いものではなかったとのことです。
さて、再び笑気ガス麻酔が歴史の舞台に登場するのは1862年、最初の抜歯術から17年の月日が流れます。その主人公は最初の手術にも立ち会ったコルトンなのでした。
コルトンは1862年に老婦人の無痛的抜歯術に成功し、1863年にはニューヨークで歯科医院を開業、笑気麻酔を用いた無痛的抜歯を一般化し、それ以来笑気ガスは歯科において抜歯に用いられるようになりました。
その後も麻酔の技術は現在へと続く進化を遂げていくのですがそこでもやはり歯科医師が重要な役割を果たします。
その話はまたつぎに書こうと思いますが、歴史的に見ても口の中の痛みというのは人類が優先的に克服する必要があったものなのかも、と考えてしまいます。それぐらい敏感なところであり、虫歯等人類と感染症との闘いの最前線の場所でもありますからね。痛くなる頻度も自然と高くなる場所です。
ですから我々歯科医師は麻酔の技術を鍛錬するとともに患者さんに不安を感じさせない工夫が必要となるのです。しかし、医の本質を考えてみるとその工夫を考えること実行し続けることは当然でもあるし、歯科医冥利に尽きることでもあると思います。
きらら歯科 比嘉。